先日、10月14日に行われた感謝イベント、
『Thank U Lime』の様子を収めたフォトアルバムをアップしました。会場に足を運んでくださった方々、本当にありがとうございました。皆様のおかげで、とても楽しいLimeになりました!写真は、公式サイト、『NEWS』のページよりご覧ください。
COSKEL UNIVERSITY
イベント当日は、10月とはいえ、さすがにNY、早くも冬の気配を感じさせる寒ーい夜となってしまったのですが、会場となったブルックリンはFlatbush アヴェニュー沿いのバー/クラブ、Chocolate Monkeyは熱気で一杯!予定より遅れて(申し訳ありません、ご多分にもれずトリニな集まりなもので…)午後10時過ぎに、まずはKevonのパフォーマンスでキックオフ。モデル並みのルックスで、COSKELの最新ライン『Sunday Bess』のパーカ&ジャケットを、オールドスクールなキャスケット&コンバースを合わせてカジュアルかつヒップに着こなした彼が登場した途端、ステージがぱっと華やぐのがわかりました。美しく伸びのある高音ヴォーカルで、爽やかにそして甘く切なく歌い上げるケヴォン。会場の女性陣(&ゲイピープル…目が少女マンガのキャラみたいにキラキラしてました・爆)は皆、うっとりと聴き入っていました。
バックはDJプレイのみといういたってシンプルなステージ構成でしたが、それだけに歌の巧さが光っていました。彼自身の曲を数曲披露後、おまけで何と!あのカリスマR&BシンガーのMaxwellの曲をチョイス!顔も雰囲気も似ているなーと前から思っていたのですが、ご本人もしっかりわかっているとは立派です。マックスウェルのファンの方ならご存知と思いますが、かなりの難曲ばかり。しかしながら、あの高音を完璧に再現!ケヴォンのバージョンは、単に本家に似ているというよりは、そのまま越えちゃいそうな勢いでした。その後…さらにおまけ中のおまけがあって、これがまた見ものでした。ケヴォンがビートボックスを披露、ショーのMCを勤めていたうちの相方Xolani氏が、それに合わせてラプソ(トリニ語のラップ)のフリースタイルを始めるというハプニング的なパフォーマンスが展開されて、会場は大いに盛り上がりました。
この彼、ケヴォンは、あえて言うならケヴィン・リトルやルピー的な位置にいるシンガーですが、ヴォーカル・スキルの点で、彼等をしのぐ実力を持っていることは間違いありません。どうしても、今時のカリブ地域のアーティストというと、変にアメリカのヒップホップに影響されていて、例えば金のチェーンを下げちゃってたり、ダボダボのTシャツとジーンズ、大きすぎるベースボールキャップに足元はナイキ一辺倒とか、はたまたスーツを着ればそこはかとなくチンピラ風という(爆)、どうにもあか抜けないゲトー風味の人が多い中、彼のようなスタイリッシュなアーティストはとても新鮮に映ります。しかも、NYやマイアミ生まれの2世3世ではなく、トリニからごく最近やってきたばかりでこれだけのセンスを身につけているというのは、ある意味、奇跡的とも言えます(ですが、Lord Kitchenerなんかの若い時の写真を見ればわかりますが、昔のカリプソニアンは英国譲りのセンスでめちゃめちゃお洒落でしたから、実は先祖返り?でしょうか)。
いかにも、NYでもヴィレッジあたりに住んでそうというモデル然としたルックスながら、話し出すと人懐っこいトリニ・アクセント全開なところなんかも、意外性があってチャーミングなケヴォン。ファンにもとっても親切に応対してくれて、気取らない人柄も魅力です。今のソカ・シーンにはいないタイプなので、ブレイクが大いに期待されます。こういう、ネオソウルな雰囲気のソカ・シンガーが出て来てくれたことで、これから、シーンがまた違った活況を見せてくれるのではないかと思っています。今度はぜひ、彼もバックバンドを連れて来てほしいと思います。彼ならば、アコースティック・ギターのみでアンプラグドなライブなんかもオツですね。
そして、ケヴォンのロマンティックな歌声の余韻も醒めやらぬ中、待ってましたのOrionのステージが始まりました。噂の生バンド(ドラムス、ギター、ベース、キーボード、バックボーカル)を率いて堂々の登場、自作のカリプソ・チューンでショーの幕開けです。この日は、COSKELのベストセラーアイテムのひとつ(そして、何故だか日本ではそれほど出ないのにアメリカでは圧倒的人気を誇る)、PRAA Teeで決めてきてくれました。ブラウンのハンチングや、ウッドビーズのネックレスなどをさりげなく合わせた、ラフでありながらどこか渋さの光る彼らしい着こなしです。満を持しての初の単独ステージとあって、まさに『水を得た魚』状態、しょっぱなからぐいぐいと聴衆を引き込んでいくオリオン君。実に頼もしい限りです。いつもCOSKELをサポートしてくれている彼のそんな晴れ姿に、筆者、目頭が熱くなりました。彼が優秀なエンターティナーであることはすでに十分知っていたものの、改めて、目一杯、全身で自分を表現する、純粋かつエネルギー溢れる彼の姿に圧倒されました。ちゃんと『トベイゴ・クルー』も駆け付けていて、トベイゴニアンのオリオンをがっちりサポート、Bachannalなノリで盛り上げてくれました。
しかしながら、まだひと月ほど前に結成したばかりというフレッシュなバンドということで(ですから、正式な名前もまだないのです。募集中だそうです・笑)、グルーヴィーな演奏で楽しませてくれたものの、まだ若干、バンドとしてのまとまりや、ヴォーカリストへの配慮に欠ける点も。Orionは本来、アカペラで歌い上げることのできるほどの素晴らしい美声の持ち主でありますが、この日はどちらかというと、そのスキルは封印。リーダーという立場から、バンドとしてのサウンドを追求したかったように見受けられました。また、初めての試みということでやはり緊張していたのか、あれっ?らしくないなというちょっとした音のずれなども時にありましたが、これは仕方がなかったかなと思います。もう少し、彼のヴォーカルをじっくり味わいたかったな〜というのがファンとしての本音ではありましたが…結果としては、さすがは我らがオリオン、当然のことながらステージは大成功でした!
合間で、ボブ・マーリーやシズラなどのカバーも織りまぜながら進行し、会場のレゲエファンも納得のパフォーマンス。後半のハイライトとして、ギター片手に、70年代の社会派のカリプソ・チューンをあえて選んで披露してくれたのも、若いのにオールドスクールな彼らしい選択で唸らされました。『有名ではないけど、こういう素晴らしい内容の曲がたくさんあるんだ。そういったところがカリプソの良さのひとつなんだ。』とオリオン。COSKELの活動が、いかにアーティストとしての自分の姿勢に影響を及ぼしていて、そしてそのことを大事に思っているか。また、トリニダードのカルチャーを守りつつ、活性化していこうというCOSKELのコンセプトに非常に共感していて、もっと広めていきたいといった内容をスピーチしてくれたのですが、ステージ上から率直なリスペクトを示してくれた彼の言葉に、身近な友達ながら、心から感動したCOSKELクルーでした。
さらには、隠れた得意技である、タップダンスまでも披露してくれたオリオン!カリプソのリズムに合わせてということで、難易度はかなりのものだったにも関わらず、難なくクリア。とにかく芸達者ぶり、生粋のエンターティナーぶりをここでも発揮してくれました。最後にアンコール曲として、あの、Shurwayne & Ma$tamindのヒット曲、『Don't Stop』を披露してくれたのも嬉しかったです。オリオン・バージョンのDon't Stop、オリジナルのShurwayneに負けず劣らず聴きごたえがありました!終始、観客を引きつけ続け、彼らしいカリスマの感じられるパフォーマンスで、ステージ上での一挙手一投足から、文字通り目が離せませんでした。ステージを支配できる強力なキャラクターを持っているということは、技術や声質以外に、時にキャラ勝負のカリプソニアンとしての絶対条件です。演奏を終えて大喝采を浴びるオリオンの姿に、我々COSKELも非常に誇りを感じました。彼のような若くてグッドルッキングなカリプソニアンというのは、これまた今のシーンにはいないので、これから絶対注目される存在です!
今後の課題としては、バンドとして、カリプソ/ソカという、高度かつ、熟練された演奏テクニックを必要とするジャンルをどのように極めていくか?ということがまず上げられるかと思います。XtatikやTraffik、それから、大御所のRoy Cape All StarsやSunshine Bandなどの一流バンドの生演奏を一度でも観た方ならおわかりになるかと思いますが、カリプソ/ソカのバンドというのは、非常〜にタイトでなければなりません。まず、ドラムスが完璧なタイミングを刻めること。ベースラインがぶれないこと。レゲエやロックなどと比べても、リズムのコントロールやサウンド全体のバランスをとるのが非常に難しいジャンルです。トリニ音楽のキモは、メロディではなく、あのリズムにあるといっても過言ではないでしょう。リズムセクションのみで構成された有名なバンドもありますし、例えばスティールバンドでも、主役であるスティールパンばかりが注目されがちですが、どのバンドにも必ず、ドラムスやアイアンなどのリズム楽器を集めたセクションがあり、バンド全体を統率する、人間の体で言えばちょうど心臓のような役割を担っています。その名も『エンジン・ルーム』と呼ばれているほどで、まさにサウンドの要となる存在なのです。
もちろん、アーティストのバックバンドならば、リズム楽器以外のパートも、あの独特のカリプソのビートを完璧に乗りこなすことができないといけません。そして、ソカアーティストというよりは、特にカリプソニアンと共演するような格別にスポンテニアスな状況の場合には、エクステンポ(即興のカリプソ)などにもさっと反応できること、ヴォーカルの動きに即座に的確に呼応できる柔軟さを持ち合わせていることも必要です。
…少々大げさになってしまいましたが、これもひとえに、オリオンの才能に対する期待の大きさゆえです!バンドというのは、一朝一夕には成り立たないもの。プロなので当たり前ですが、各パートを担当するメンバーそれぞれに実力は備わっていますので、あとはいかにバンドとしての一体感を高めていくかだと思います。こういった部分は、セッションを重ねて、だんだんと成長していくのが普通ですので、次回の公演を楽しみに待ちたいと思います。今度はアイアンセクションも入れてほしいなーと、個人的には思っています。筆者もカウベルでも練習して、立候補しようかな〜(爆)。そうそう、もちろん、スティールパンも入れてほしいです。本当に、ますますこれからが楽しみになってきました。
オリオン、そしてケヴォンと、ふたりとも実に素晴らしい才能の持ち主で、各人それぞれの個性を生かしたステージを見せてくれました。ゆくゆくはぜひ、日本に連れていって紹介したいアーティスト達です。日本のリスナーは、お洒落でセンスも鋭いし、様々なジャンルの音楽を聴き込んでいて耳も肥えているので、絶対に彼らを気に入ってくれると思います。いつか、できるだけ近いうちに、Ma$tamindのShawn達なんかも一緒にツアーを組んで、この前行ったようなCOSKELのローンチング・イベントを、日本でも大々的にできたらなーと考えています。だいぶソカやパンも定着してきたことですし、皆、日本にとても興味を持っていて、誰も彼も行く気はすでに満々なので(爆)、いろいろとうまく条件が折り合えば、面白い事ができそうです!
彼らのmyspaceのページは以下です。オリオンのほうは、プライベートなページということで、特に音楽の情報は載っていませんが、正式なレコーディング音源が上がり次第、音楽専門のものを別に開設するようです。
ORION GORDON's myspace
Kevonのページはすでに絶賛稼働中。サンプルもたくさん聴けます。ソカはちょっと…という方も、R&Bぽいものが多いのでお気に入りが見つかること間違いなしです。女性ファンからのメッセージの多さを見てください(笑)。
KEVON CARTER's myspace