トリニダードのクリスマスに欠かせないお菓子、『ブラック・ケーキ』も、今回の後編【仕上げ&試食編】をもってついに完成。
前編【仕込み編】は
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中編【制作編】は
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さて、ケーキ生地を流し込んだ型をオーブンに入れて、待つ事1時間〜1時間半、いよいよ焼き上がりだ。竹串などを刺してみて、生地がくっついてこないようならばOK。オーブンから取りだして冷ましておく。
そして、ここからが仕上げ段階での最大のコツ。20分ほど経ち、まだ温かいうちに、フルーツを漬け込んでおいた洋酒を半カップ分ほどとっておいたものを、ケーキの表面に塗り付けてたっぷりとしみ込ませるのだ。まるで、ケーキにお供え酒でもあげているような感じだが、生地そのものにラム&ブランデー漬けのフルーツが大量に含まれているにも関わらず、さらにダメ押しのごとくお酒を吸わせるとは、まさに『酔っぱらいケーキ』。クリスマスケーキとはいえ、お子様はお断りなのも頷ける。もっとも、皆、親の目をぬすんでつまみ食いしているに決まっているのだが(爆)。
そのまま、すぐに試食!といきたいところだが、ケーキがすっかり冷めたら、乾燥しないようにラップで包み、さらにアルミフォイルでくるんで、冷暗所で少なくとも3日は放置しておく。じっくりと味を熟成させるのだ。気候の暖かいトリニダードでは冷蔵庫で保存するが、南国でなければ、冬場ということで室内の冷え込む場所に置いておけば大丈夫だろう。そのまま長期間保存する場合は、一週間ごとに取りだして洋酒を塗り付けて乾燥を防げば、向こう3ヶ月は美味しくいただけるらしい。つまり、取っておけばおくほど、さらに酒浸り(笑)になっていくというわけである。
そして約4日後、待ちに待った試食タイム。水分をたっぷり吸って、じっとりと重いケーキの塊…取りだしてきただけで、もうお酒の匂いがぷんぷんだ。おもむろに、ナイフを入れて切ってみる。普通のケーキのようにポロポロと崩れず、しっとりとした切り口。とてもじゃないが、折角だから大きい切り身でぱくり、などとは言っていられない。そのぐらいアルコール分が『強い』のである。10〜12等分、場合によってはもっと小さめに切り分けてもいいぐらいだ。
口に含んでみると、うーん…これぞ、オトナの味。ブレンドされたフルーツが香り高く、ラム&ブランデーの芳醇な香りと相まって、非常にエレガントな風味。食感は、ケーキのようでケーキでない、しっとりとプディングのような感じ。レシピ的に、フルーツやバター、卵の量からすると、粉の量が比較的少なめなことも影響しているだろう。総合して、何だかとても『高そう』な味に仕上がっている。以前、東京の超高級ホテル、パーク○イアットの特製フルーツケーキを食べたことがあって、その値段と美味しさに驚いたが、これもあれにひけをとらない旨さではないか?そして、クローブやシナモン、八角、ヴァニラなど、アイランド・クッキングには欠かせないスパイスが効いているせいか、もっと個性的な味だ。
もっとも、多種・大量のドライフルーツ代、ラム酒、ブランデー代と、かなり投資(爆)したケーキだったので、これで旨くなきゃ許さんという気持ちはあったが、予想通りの美味しさで十分満足。今回は2台制作し、それぞれ、我が家と筆者の実家の分のつもりでいたのだが、我が家の分は、相方が驚くべき速さで完食…クリスマス前には、ほぼ消失するという緊急事態発生。これまで、ブラックケーキは何か苦いし酒くさいし、イマイチ好きになれないと敬遠していた相方が、今回のものに関しては『甘さと香り、テクスチャーのバランスが完璧』と絶賛、急遽、追加生産決定!となった。
まさに、ラムが名産の南の島ならではの、豪快なクリスマスケーキ。複雑な味わい、濃厚な口当たりもさることながら、実際に制作してみて、これだけ手間暇がかかっているだけに、さすがは一年に一回のクリスマス限定の味として珍重されるわけだと深く納得だ。今回の場合、フルーツの漬け込み期間が一ヶ月半ほどと短かったが、来年向けにはできるだけ早く準備をし、少なくとも半年は仕込みにかけたいものである。今回のものは、ブラックというより『ダークブラウン』という感じに仕上がったが、以前、書籍の写真で見たブラック・ケーキは本当に真っ黒だった。おそらく、フルーツを漬け込む時間が長ければ長いほど、熟成して黒さも増すのではないかと思われる。あとはできるだけ、濃い色の黒砂糖、シロップを使うことだろうか。来年もぜひ挑戦したい。