さてさて、今年の半分が終わってしまい、もう7月ですね。年々早くなると言われている次の年に向けたトリニダード・カーニバルの準備ですが、マス(仮装)パレード参加バンドが、コスチューム発表会を前年の7月、8月に行うのは今や当たり前になってきました。ご存知のとおり、カーニバルの本番は来年2月なんですが…
コスチュームの発表会、通称Band LaunchとかLaunchingと呼ばれるものですが、ここ数日で、人気または注目のマスバンドの来年度のプレゼンのテーマ&スケジュールが出揃ってきましたので、サクッとご紹介です。Tribeが一番乗りとの噂もありましたが、1日差で、Hartsが意地で(?)毎年トップバッターの座を守りました。
◆主な人気バンド(ローンチング日程順)◆
HARTS 『Lights, Camera, Action』
7月27日直前でキャンセル…されました
TRIBE 『Myths & Magic』7月28日
Ronnie and Caro(Legacyから独立) 『De Gulf』8月1日
Island People Mas 『Animal Instincts』8月18日
Pulse 8 『Marrakesh』8月21日
Taboo 『That 80's Show』8月25日
Dream Team 『Bejeweled』8月26日
Trevor Wallace & Associates +
2 Ha'Quai(合併)『Nautica』 9月13日
D Krewe(Trini Revellersから独立) 『Love is...』9月15日
Trini Revellers 『Viva Mexico』9月23日
Legacy『Africa』10月13日
◆日程が未定のバンド◆
Image Nation 『La Brea』 ?月?日
Genesis『TALES』 ?月?日
Brian Mac Farlane Carnival 『Earth』 ?月?日
◆参加予定はあるが詳細未定のバンド◆
The Callaloo Company (Peter Minshall)
◆セレブリティによるバンド(いずれも詳細未定)◆
西インド諸島チームキャプテン、クリケットの英雄Brian Lara
カーニバルキングとして有名なマスカレーダーCurtis Eustace
あっ、それから、我々の親しい友人も、小規模ながら自らのマスバンドを作るそうです!すごく楽しみです…情報が入り次第お伝えします。
その他、昨年度の優勝バンド
Brian MacFarlaneや、完全復活が噂され続けていて未だ実現していない、トリニの人間国宝級デザイナー
Peter Minshall等のいわゆる『舞台芸術系』バンドのローンチングは、あるとすれば今年後半だと思います。ただ、MacFarlaneは昨年、衣装の実物は一切見せずに『すまんがデザイン画の公開だけで我慢しておくれローンチング』を開催するという強硬策に出たので(結局、カーニバル当日は凝りに凝った衣装の数々を披露し、ぶっちぎりで優勝しましたから文句ないですが!)、今年もそのような事になったりするかもです。
これらのイベントは基本的に、この時期にトリニダードに居ることのできるラッキーな人しか見られないわけで、海外にいる我々はローンチングの模様が後からネットにUPされるのを待つしかないのですが…大体の日にちを押さえておけば、かなり早く情報がゲットできると思います。
なぜそんなに戦々恐々としないといけないかというと、昨年より当ブログのカーニバルのコラムを読んでいただいている読者にはおわかりかと思いますが、ここ2、3年は特に、TRIBEやIsland Peopleのような超人気バンドのコスチュームは、地元だけでなく海外からの参加者も多いため、発表と同時に争奪戦、早いモノ勝ちで手に入れるのがトレンドのようになってしまっているのです。
ローンチングが行われて少しすると、コスチュームの写真やサイズ等が各バンドの公式サイトにUPされ、その後、地元在住者のためにはマスキャンプと呼ばれるバンドのショールームで直接、また外国からの参加者向けにはオンラインで参加登録の申し込みが始まります。が、人気のセクション(衣装)は瞬く間に売り切れるので、それぞれ、マスキャンプでは朝から長蛇の列で辛抱強く並び、オンラインではPCにかじりついてないと入手不可能と言われているほどです。
当然、こういった過度のフィーバーぶりには、余りに馬鹿げているという批判もあります。人気に比例するように、コスチュームの価格、すなわち登録料&参加費が高騰していることも問題視されています。これは、『オール・インクルーシヴ』と呼ばれるバンドが増え、コスチューム自体よりも、パッケージ化されている付属のサービス(カーニバル当日のセキュリティや洗面所つきトラック、救護班、食べ物飲み物、おまけグッズなど)や、バンド運営の人件費にお金がかかっているせいとも言われています。数年前のPoison(トリニカーニバル史上最大と言われたマスバンドで、昨年解散)のコスチュームなどは、現在の人気バンドの半分ぐらいの価格ながら、ビーズや羽飾りがたくさん使われていたゴージャスなものだったとも聞かれます。
そうしてコスチュームのパッケージが値上がりした結果、外貨をもった海外からのリッチな参加者が増える一方で、本来、カーニバルの伝統を支えてきたはずの地元の人々の参加が押し出される形で減ってしまったり、イベント化してきたせいでセキュリティも厳しくなり、和気あいあいとした雰囲気が消えつつあるという声も聞かれます。そんな状況から、むしろカーニバル当日のマスより、その前夜祭的な行事であるジューヴェイのほうが、昔ながらのスタイル、万人が分け隔てなく参加できる平等性や、夜明け前に行われる独特の神秘性で人気が高かったりもします。
が、そういった声も多数あるものの、来年度もマスを巡ってクレイジーな状況がさらに加速するのは間違いありません。特に、参加人数が多い若手の女性マスカレーダーは、コスチュームを選ぶ際、セクシーだとか可愛いといった外見を最も重視して選びますから、トレンドを押さえた衣装を出してくるファッション性の高いバンドに人気が集中するのはある意味仕方のないところでしょう。また、TRIBEやIsland People Mas(以下IP)、Hartsのようなバンドは、いわゆるセレブバンドというか、参加できること自体がステイタスのようなところもあります。
来年度は、D KreweやRonnie and Caro等、Trini RevellersやLegacyといったバンドから独立する元・人気セクションがバンドに昇格しての、初のプレゼンテーションが楽しみです。デザイン力には定評のある実力派ばかりなので、どんなものを見せてくれるかじっくりお手並み拝見といったところです。
が、個人的にはまず、IPの動向が気になるところです。センスの良さではダントツのバンドなだけに、今年は動物がテーマということで、シマウマやキリン、トラなどのアニマルなモチーフを上手く使ったモードな感じのものが見られそうです。関係者の話では、コスチュームのプロトタイプの出来も非常によいそうです。
来年は『神話と魔法』というロマンティックなテーマのTRIBEは、IPと人気を二分し、何よりも運営がきちんとしていて安心できるバンドだということで評価が高いのですが、どうやら昨年以上に宗教団体化してしまう模様です。毎年集まる熱狂的な参加者向けに、優先予約カードなるものを発行したのは記憶に新しいところですが、そのシステムを来年はさらに強固なものにバージョンアップするそうで、そうなるともう、新規登録者の入る余地はますます無くなるのではないかと…
老舗バンドのHartsは、豪華な衣装が揃いますし運営にも定評がありますが、ヨーロッパ系のマスカレーダーが多く、ハイソというかスノッブというか独特の雰囲気があるようです。毎年、テーマがあってないようなもので、いつも似たようなデザインで変化がないとも指摘されていますね。
毎年ユニークでパワフルなTrini Revellersは、昨年ローマ帝国、今年フランス革命、来年はメキシコと万国博覧会のようなテーマです。毎年、優勝を狙える圏内にいますし面白いデザインのコスチュームが多いですが、それだけに、何年もマスをやってきているような年齢層高めでベテランの参加者が多いそうで、若い女性に大人気、とは言えないようです。
Pulse 8は来年が2年目ですが、かのPoisonから鳴り物入りで独立した割には、おとなしめのデザインでそれほど今年の評価は高くなかったので、来年はひと味違うものを見せてほしいなと思います。その他のPoison独立組(Dream Team等)にも、もうちょっと頑張ってほしいところです。
カリスマ・バンドリーダーのBig Mikeの率いるLegacyも、毎年、衣装は可愛いですし(来年のアフリカというテーマにも期待大です)、知人で参加された方からは、手頃な値段であることと、地元の女の子の参加者が多く、ローカルなトリニならではの雰囲気で良かったと聞いています。が、あまり当日のパレードがオーガナイズされていなくて、自分のセクションが集合場所でなかなか見つからず困ったといった意見もネットで見かけました。
同様にIPもオーガナイズの点では、実はかなり評判がよくないです。ひどい例だと、高額なコスチュームを予約していたにも関わらず、取りに言ったらブラだけ、あるいは背中のパーツだけなかったというもの。また、衣装の受け渡し時に混乱があり、暑い中で長い時間待たせられたあげく、また来てくれと言われた、あるいはカーニバル当日も、飲み物を提供するはずのバートラックが途中でどこかへ行っちゃって、炎天下でノドが乾いて困った…といった様々な苦情を耳にしています。
こうして列挙すると、良いのは衣装のデザインだけみたいで、サービスのまずさに何だかがっかりしてしまいますね(苦笑)。しかしながら昨年、筆者が日本からの参加希望者の方々のレジストレーションをお手伝いしたときには、アジアの遠国からの初の登録ということで、海外送金にいろいろなオプションを用意してくれたり、担当の方がとても熱心で親切でしたので、個人的には良い印象を持っています。記録が残っているはずなので、IPから『来年もよろしくねメール』がそのうち来るんではと思われます。来ましたらこちらで公開したいと思いますので、日本のIPファンの皆様、今しばらくお待ちください。
ただ、筆者がもっとも興味のある、有名デザイナーの
Sonia Mack女史のデザインするIPのリードセクション、これは
パンサー(黒豹)何と黒蜘蛛(Black Widow Spider)をイメージしたものになると言われ早くも人気と期待を集めていますが、IPの一部でありながら独立しているスペシャルセクションなので、IPの本体とはレジストレーションの手続きが若干異なり、ソニア女史のオフィスに直接問い合わせないといけないようです。(Michiruさん、もし来年のソニアについて情報ゲットされた際には、ぜひ!お聞かせいただければと思っております)
とにかく、これからの3ヶ月に渡るバンドローンチング・シーズンが待ち遠しいですね!写真下は、昨年のIPのローンチングの様子です。ただのコスチューム発表会と思いきや、何じゃこりゃと思うほど異様に人が集まってますね…ここではMachelのステージが写ってますが、他のマスバンドも、大きいところは人気ソカアーティストを招いて、フェット(ソカの大規模コンサート)付きで行う場合が多いようです。普通はチケットを購入して入場します。
フェット目当てで行くのなら、トリニらしく(笑)時間に遅れて出かけていっても構いませんが、本来の目的通り、真剣にコスチュームをチェックしたいマスカレーダーなら、かなり早めに会場入りして、できる限りステージに近い位置を確保するのに腐心しなければならないようです。いやはや、闘いはすでにそこから始まっているというわけですね…