Peter Minshall、Brian MacFarlaneに続いて、シアトリカル/コンセプチュアル・アート系マスの第三世代とも言うべき注目のバンドが来年登場します。
『The Oracle』(オラクル)というバンド名で、デザイナー/バンドリーダーは、若手ながら有名マスデザイナーの右腕として活躍してきたAaron Schneider(アーロン・シュナイダー)氏です。このシュナイダー氏、一昨年に最優秀バンド賞に輝いたTrini Revellersの古代ローマをテーマとしたプレゼンテーションの際にもデザインディレクターを務めた経歴の持ち主であり、その実力はすでに高い評価を得ています。カナダのカーニバル、カリバナのバンドでもコスチュームデザインを手がけており、また、来年はOracleの他にTrevor Wallaceという別のバンドの衣装(すでに発表済み)もデザインするという売れっ子ぶりです。
さて、このOracleというバンド、先月サイトを立ち上げてからというもの、次のセクション発表までXX日、乞うご期待!といった具合に数日ごとに一つずつセクションを掲載していくという方法を取ってきてまして、なんかもったいぶってるな〜と言いますか、いったいいつになったら終わるんだろう(爆)と思っていましたが、ここに来てようやく全セクションが出揃いました(それでもまだ、秘密のセクションが存在する模様です…近日発表だそうです)。
気になるバンドテーマは『GNOTHI SEAUTON』というもので、これはギリシャ語?ラテン語?そのあたりの言葉で、英語だと『Know Thyself』なのだそうで、日本語なら『なんじ自身を知れ』といった意味ですね。何やら哲学的かつ抽象的なテーマですが、全10セクションを通じて、人間の生における様々な局面を表現し、その時々における決断が自分自身、また周囲の人間に対してどのような影響を及ぼすかといった内容を表現したい、とのことです。うー…さすがはコンセプチュアル系、テーマからして難解ですね。また、マスのプレゼンテーションを通じて、現代における人間の置かれた状況、自分達で自らを破壊していることに警鐘を鳴らしたい、といった試みでもあるそうです。
テーマこそ難しいものの、ガーディアン紙に掲載のインタビューで、デザイナーのシュナイダー氏はOracleについて『TRIBEのようにセクシーで、MacFarlaneのようにアーティスティック』なマスバンドにしたいとの意気込みを語っています。すなわち、本来のトリニダード・カーニバルにふさわしい品格と芸術性を兼ね備えながらも、若くファッショナブルなマスカレーダー達にアピールできるマス・コスチュームを揃えるということのようです。
ここのバンドも残念ながら、今のところはMacFarlane同様、衣装スケッチのみの発表に留まっており、コスチュームの実物が見られるのはまだまだ先のようです。スケッチを見る限りは確かにクリエイティヴで、適度に肌やボディラインの露出を交えつつも、全体にカルチュラルな味付けが施されており、ストーリー性の感じられる独創的でドラマティックなデザインとなっています。また色使いも、シックながら強烈な印象を残します。男女が上手にペアになるように注意深くデザインされており、男子コスが女子コスに比べると手抜きっぽい、という他のバンドにありがちなシチュエーションはこのバンドには当然ありません。そのあたりもよくバランスがとれていると言えそうです。
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10月の末頃に大掛かりなバンドローンチングを予定しており、衣装の実物がひょっとしたらそちらで見られるかもしれないので期待したいところです。そのローンチングも、Sparrow、Calypso Rose、David Rudder等の大物カリプソニアンたちに加え、ラプソグループの3Canal、さらには何と、ジャマイカからあのデミアン・『ジュニア・ゴング』・マーリーが出演するとのことで、超豪華メンバーによるコンサートになる模様です。加えて、Machelまでも出るかもしれないそうです。
そんなアーティストのラインナップからも、このOracleというバンドの立ち位置が伺えますね。若い世代が伝統と最先端の流行をリンクさせるという試みは、我々COSKELの活動にも大いに通じるところがあり共感を覚えます。そういった流れがトリニダード本国、そしてマス界でも出て来たことは非常に画期的なことと言えるでしょう。
コスチュームの価格のほうも、MacFarlaneみたいなユニークなのを着てみたかったけど、さすがにコスチューム一着に500米ドル以上はポンと出せない…という若い人向けに、大部分が高くても400ドル代となっています。なお、このバンドも諸々のサービス込みのオール・インクルーシヴとなるそうです。
また、今現在、プリ・レジストレーションを受付中ですので、興味をお持ちの方は応募してみてはいかがでしょうか。これは、今彼等のサイトからメールアドレスを登録しておくと、一般向けレジストレーションが始まる前に特別なお知らせが来て、優先的に好きなコスチュームが購入(ディスカウントもありだそう)できるというものです。もちろん、メアド登録は無料ですし、気が変わってやーめた、となってもただ単に破棄されるだけなので、気楽に参加できます。公式サイトはこちらです:
The Oracle is coming
ビキニ&ビーズのイケイケ系マスと、シアトリカルな本気系マスの失われた隙間を埋めるべく誕生したOracle、早くも各方面から熱い注目を浴びています。来年のロードでは文字通りの台風の目になりそうですね。自らライバルと目しているTRIBEやMacFarlaneにどこまで肉薄できるのか、今から楽しみです。